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How to Make "Mash Up"

Mash Up Award the 2ndが開催されるとのことで、僭越ながら前回受賞者としてコメントを寄せさせて頂きました
今回は15社以上の企業がWeb APIを公開・提供するそうで、中々面白げ。現時点ではどういうAPIが揃っているのかまだ全部チェックしきれてないんだけれども(輸入CDのライナーノーツみたいだ)、コメントに書いた通り、それだけの企業が「乗ってきた」こと自体がすごいと思う。確かに企業にしてみれば、API公開はただのロックイン戦略でしかないんだけれど、この場合、ロックイン対象はGeeksなわけで、それだけGeeksを企業が重視するようになったということになる。つまり、インターネットの世界のEarly AdopterがGeeksだという認識と、Geeksをターゲットにしたマーケティング(ギーク指向マーケティング、Geeks Oriented Marketing)が漸く一般化してきたというわけだ。


「API公開」の企業にとってのもうひとつの利点は、市場に対する開発のアウトソーシングである。APIを公開しておくだけで、市場の草の根開発者が自動的に二次開発を行ってくれるわけで、企業としては開発コストを下げることが可能になる。うまくいけば開発コストダウンと、二次サービスによる集客アップが図れる一方、失敗しても投資の回収リスクは殆ど生じない(勿論、公開API準備コストが殆どかからないという前提だが)。本来自社でまかなうべきコストを市場に投げるという意味では、社員への報酬を市場取引に任せてしまうストックオプションに似た仕組みとも言えるかもしれない(すると、その内API公開のコストP/L計上すべきなんて議論に…!?)。


さて、前置きが長くなったが(いや寧ろここまでが本文か)、本題のMash Upの作り方について。既にKawa.net Blogでスマートに説明されてるので、その通りなんだけれども、大事なのはどういうRemixをするか、という点。自分の場合、大きく分けて、二つの方法論(というほどのもんじゃないが)に沿って作っている。一つ目は、「こういうことができればCoolだよなあ」という、Usage-Centricな発想に基づくもの。例えばU2B Playerがそれ。「YouTubeのお気に入りをブログで表示できたらよくね?」みたいなところからスタートして、自分が使うところをイメージしてインタフェースを作りこんでいく。二つ目は、ビジネスモデルの雛形に肉付けしていく、もっとBusiness-Orientedなもの。例えばYouTube+Adsとか、Bidders MapAdsがそれ。「動画に広告」とか「地図に広告」とかをイメージする、或いはイメージしてもらう為に作ったもので、テーマが歴然としている。


恐らく、ビジネスマン的には後者の方が作りやすいし、簡単だ。「頭だけでビジネスを考えてしまう人たち」のエントリの冒頭部分に挙げた新規ビジネスの発想法の2と3などを参考に、素材とするAPIの組み込み方を考えるだけ、それだけの作業である。しかし、個人的にはこうして作ったMash Upは「あざとい」のでイマイチだと感じている。その一方、前者のようにUsage-Centricで作られたMash Upは、作者自身が楽しんで使っているだけにユーザーも素直に受け入れられる「面白さ」がある。いずれにせよ、Mash Upを作るにはできるだけ多くのAPIやサービスを知っていることが前提条件で、可能な限りのTrial & Errorを繰り返すことが方法論云々以上に重要だと思う。


ちなみに、「Last.Tube」はUsage-CentricかつBusiness-OrientedなMash Upだと思ってるんだけど、あんまり(というか全く)注目されてないっぽい。しょぼん。シンプルながらCOOLな「ZonTube」みたいなMash Upをメイクできるかどうかは、結局はセンスの問題、とか何とか身も蓋もないことを最後に言ってみる。

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Got To Do (alternative GTD)

2005年に"Web2.0"というキャッチーなフレーズで総括されたここ数年のインターネットの「革新」が、2006年には世の中にかなり広く認知されるようになった。勿論それは、ベストセラーとなった梅田望夫氏の「ウェブ進化論」の貢献に因るところも大きいわけだが、それ以上に、YouTubeやはてなブックマークなどのサービスが非常に身近になったことや、ブログやSNSの「簡単さ」が一般ユーザーにとっての障壁を下げていることが大きいだろう。こうした流れの中で、ブログパーツ(Widget)を使えば"MashUp"さえも今や一般ユーザーが簡単に実現できるようになった。つまり、2006年はWeb2.0(或いはSemantic Web)のコモディティ化の年だった、と言える。

その一方で、Geeksは一般ユーザーには全く実現し得ない世界を構築しつつある。例えば、Perlを使ったインターネット上のリソースアクセス自動化ツールの「Plagger」などは、使い勝手・必要性・面白さの全ての意味で、一般人には理解不能なツールである(Googleに「はらへった」と入れただけでピザが届いても普通の人は喜ばない)。同様に、YAMLやJSONの便利さや、Ruby On RailsCakePHPの生産性の高さも一般人には全く理解できない世界だ。この意味で、インターネットとITは、ますますハイエンド化が進み、敷居が高くなっていると言える。

このように纏めると、インターネットが相反する二つの方向に走っているように思える。しかし、この「コモディティ化」と「ハイエンド化」の双方に共通しているのが、「情報へのアクセス」を実現したいという欲望である。YouTubeはてなブックマーク、Plaggerは情報へのリーチを容易にするし、ブログやWidget、Railsは情報のアウトプットを促進する。各々、必要な情報に「アクセスしたい」「アクセスさせたい」という欲望を実現するツールやサービスである。インターネットも誕生から10年が経過し、複雑になってきたように思えるが、結局のところ「情報流通」という原点に回帰しているだけだとも言えよう。

こうした中で、ますます重要性を増すのは「Search」である。何を今更、と思う向きもあるかも知れないが、世の中にはGoogleでさえリーチできない情報が多数ある。また、Googleのサーチアルゴリズムでは不満なユーザーも沢山存在する。単に情報を収集するだけではなく、情報の海の中から必要なものを峻別し、組み合わせることで価値あるものに仕上げる能力の重要性がこれまで以上に増している。「Search」と言うよりは「Discovery & Remix」という方が正しいかもしれない。

忘れてはならないのは、「Discovery & Remix」にはユーザーのアクションが不可欠だと言うことだ。私自身も、「自分がやらねばならない(I've got to do)」ということを強く意識しつつ、これからも様々なことに取り組んでいきたいと思う。

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