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商社が商社である限り起こるジレンマ

商社という業態は非常に収益率が悪い。
先だって発表された、所謂五大商社の収益率を並べると下記の通りとなる(単位:百万円)。

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各社過去最高益と言っても、収益率は非常に低いことが一見してわかるであろう。
理由は今更挙げるまでもないが、商社は「買って売る」という所謂Tradingを生業としているからである。収益を評価する最も簡単な指標は粗利益だ。粗利益は下記のFormulaで計算される。

(粗利益)=(売上)-(売上原価)

商社は「買って売る」わけだから、売上は顧客に商品を売った金額であり、売上原価はSupplierから商品を買った金額である。そして、実は、このSimpleなFormulaこそが商社のTradingの限界を示している。

上述の粗利益を最大化しようと思うと、売上を上げるか売上原価を下げるしかない。売上はMarket、つまりカスタマーが決めるわけだから、売り手たる商社に意思決定の権利はない。一方、売上原価については立場が逆転するため、買い手たる商社に意思決定権が生じることになる。何故なら、「金を払う」というOptionを有しているのは常に買い手だからである。平たく言えば、カネをチラつかせた下請けいじめは簡単ということだ。しかしながら、結局のところ商社にできるのはそこまでなのである。例えば、工業簿記の世界では「原価計算」がひとつの独立した科目として成立している通り、「原価」をどのように計算し、コントロールするかが非常に重要である。「原価」は商社のように単純に「買値」ではなく、原材料費・設備投資・研究開発費・人件費といった複雑な要素から成り立っており、それゆえに原価のコントロールという点において、工業簿記の世界、つまり製造業は非常に多くのOptionを持っていることになるわけである。

翻って、商社の持つOptionは「買値を下げる」、このひとつしかない。よって、つまるところ商社にできるのは「値下げ交渉」というベタな選択肢しかないのである。勿論、粗利益を上げる為には「売上を上げる」という選択肢もあるが、こちらに関しては製造業と商社の間に違いはない。とは言うものの、製造業の場合は研究開発や製造にイノベーションを起こし、「原価」の構造に変化をもたらすことが売上を上げることにもつながり得るので、やはり製造業の方がOptionを多く持っていると言えるのである。また、「原価」と「売上」の双方の関連性が低いから、製造業が「原価を下げる努力が売上アップにつながる」可能性があるのに対し、商社は「買値を下げる交渉」と「売値を上げる交渉」の双方を独立に続けねばならない。この意味においても商社のビジネス構造が非常に非効率的にならざるを得ないことがわかるだろう。

さて、上述の通り、粗利益の点で選択し得るOptionが少ないとすれば、どうすればTradingの収益力を向上させることができるか。Tradingを維持するための設備投資や研究開発は基本的にゼロだから、その他に手を付けられるとすれば人件費ということになる。しかし、商社は膨大なマンパワーを使ってTradingを処理しているから、人員数を削減することができない。仮に人件費単価を下げたとしても、その分離職率が上がるだろうから、結局人員減少につながり、人件費単価を下げることもできない。結果として、商社がTrading Companyである限り、このジレンマは起こり続けるのである。こうした状況を打破する為には、Tradingにおいては実質的な人件費を下げるしかない。つまり、Multi-TaskによってTradingの為のマンパワーを実質的に下げ、コストダウンを図るわけだ(そのためにITが非常に重要であることは既に過去のエントリで何度か述べた)。しかし、それでもなお、上述の「売値上げ交渉」と「買値下げ交渉」の永久ループからは抜け出せず、商社が商社である限り、永遠にこのジレンマに陥り続けるのである。

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